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From: S.N
To: info@rosenkranz-jp.com
Sent: Thursday, October 18, 2007 6:45 PM
Subject: クリニックについて
貝崎様
いつもホームページ拝読させて頂いております。
ローゼンクランツのインシュレーターも廉価なもの、
「COUSINとBABY(E)U」を愛用させて頂いております。
私はオーディオ暦はそれほど長くもなく、機器に熱中しているわけでもなく純粋に「音楽を聞く」という行為が好きななのですが、やはり今所有しておりますシステムでベストな音は出したいな、と思い始めております。
但し、前述の通り、所有する機器はエントリークラス的なものばかりでございますし、聞く音楽もポップスが中心でございますので、貝崎様にお願いするまででも無いのかなとずっと思っておったのですが、思い切って一度ご連絡だけでもと思ってメイルさせて頂いておる次第です。
所有している機器は
ユニバーサルプレイヤー esoteric DV-60
(DVD鑑賞はほとんどしておりません。ただ、音を好んでこのプレイヤーを所有しております)
プリメインアンプ unison reserch unico scecondo
スピーカー JBL4318
その他、光城精工有限会社のクリーン電源器、S/A LOGIC社の音響パネルを使用しております。
住まいは東京の世田谷区上馬でございます。
こちらのクリニックをお願いさせて頂くことは可能でございますでしょうか?。
また、その際のお見積もりと実施可能日のご連絡を頂戴できましたら幸いに存じます。
宜しくお願いいたします。
S.N
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From: info@rosenkranz-jp.com
To: S.N
Sent: Thursday, October 18, 2007 7:04 PM
Subject: Re: クリニックについて
S.N様
クリニックのお問い合わせ有難うございます。
お見積もりですが、S.N様のシステムですと、
そんなに大変なようでもありませんので、基本料金が42,000円になります。
後はどの程度のセッティングをするのかは、
その場で音の変化具合等を見て頂きながらお決め下されば結構です。
こちらの空き日は今月は20日の土曜日のみです。
11月はご希望の日に副えると思います。
カイザーサウンド
貝崎静雄
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変形の部屋なのでちょっと難しいかなと思いました |
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訪問してすぐに感じたその音は全帯域に渡って滲んでいました。その上痩せていて、薄く平面的です。ご本人の仰るように、楽器が本来持っている美しい音色は出ていませんでした。
音楽関係のお仕事をしていらっしゃるそうなので、普段から一杯良い音に接している訳です。変な鳴り方ですと”何かおかしい?”と身体が自然に反応してしまうものなんでしょう。
『音楽が楽しめないでいるのがとても辛かった』と打ち明けられました。
上の4枚の写真がお伺いした状態時のものです。下段左の写真をご覧頂きますと、右側のスピーカーの前に畳と同じサイズの吸音材が立て掛けられておりますが、この部分がL字型になっていて悪さをしているのです。
もがき苦しんでというほどの、無駄や大きな失敗はお見受けしませんでしたが、色々と試行錯誤した形跡はあるようです。小さな制振材を部屋や機材に貼ったり、オーディオボードをコンポーネントの下に敷いたり、布をスピーカーの背後に吊るしたり等・・・。
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音響パネルや吸音材の功罪
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影響の大きな物で、先ず最初に目に付いたのが音響パネルです。何でも使い方次第なんですが、今日の場合はあまりプラスに働いている様子ではありませんでした。
部屋がいびつな場合、角度や距離を正確に合わせようとすればするほど結果は無残にも裏目に出てしまうのです。
いびつな部屋であるならば、いびつで合わせてやるほかありません。こうして言葉でいうのは簡単なのですが、私の知る限りこれが出来る人は居ないので、一般の方には事実上不可能かもしれません。出来るとなると、フラッターエコーを消す為に有効と思い込んでいる拡散パネルで音を散らすことぐらいでしょうか。
美しい部屋の響きは反射があってこそ生まれるものです。スピーカーの背後を拡散パネルで全面覆い尽くすような事をした日には、高性能なオーディオ的な音は出せても音楽は決して手に入りません。具体的にはスピーカーの設置場所を動かしてもデリケートな音色の変化や美しい倍音が得られ難くなるのです。
それほどに特効薬であるという事は劇薬でもあるのです。くれぐれも過ぎた使用は音楽を切り刻んでしまう事になりますので、何事も塩梅が大切であると心得て下さい。
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拡散と吸音の巧みな使い分け
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音響パネルを左右のスピーカーの背後には使用しましたが、今回の場合、スピーカーとの間、すなわちセンター用のV型のパネルは部屋の隅々まで音が届かなくなるので外す事にしました。
この拡散パネルの設置についての注意点はどの位置に立てるべきかです。壁面にべったり付ける場合には問題はありませんが、スピーカーの背後でも自立して任意の位置に立てるとなると壁面との位置関係が重要です。
先ず最初にすべき事は拡散パネルのない状態の時に、部屋とスピーカーの響きの良い場所を見つけ出しておく必要があります。カイザーゲージを利用しながら耳で見つけ出すのです。これが出来ていない状態の中にパネルを入れると後々訳が分からなくなるので要注意です。
また、今日の場合、畳大のグラスウールが2枚あったのですが、これも右のスピーカーの外側の背後に1枚だけを、部屋のいびつさの辻褄を合わせる形で利用しました。右のスピーカーに向かい合う形で置いてあった物は左右のバランスを大きく崩すので除去しました。
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カイザーセッティングは直接波と副次反射波の折り合いをつける方法です
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一般のオーディオセッティングはビリヤードでいうと直接穴を狙うやり方で、カイザーセッティングは何回かサイドウォールに当てて間接的に狙うやり方とイメージして頂くと良いかもしれません。
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JBL-4318は素晴らしいスピーカーでした
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4311、4312の流れをくむスピーカーであることは一目瞭然です。初期の物はボーカルを聴くにあっては繋がりに不満を憶えましたが、初めて聴く4318はそこら当たりが見事に改善されていて素晴らしいスピーカーの完成度を見せてくれました。3つのユニットがセンターラインの軸上に並んでいるのが大きく効いているようです。
白いウーハーコーンのちょっと締まった男性的なJBLサウンドは健在でありながら、なんとも味わい深い音色を聞かせてくれます。今風のはやり言葉でいうとチョイ悪親父といったところでしょうか・・・。オリジナルから数えればかれこれ30年以上になるのでしょう。このスピーカーなら私も欲しいと思いますし、本気で聴いてみたいなぁと思いますね。
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JBL-4318を加速度組み立て |
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そんな気持ちになったものですから、この4318を私なりに調教したくなってS.Nさんに「加速度組み立て」を提案しました。ツイーターのみ磁束の方向性はO.Kでしたが、ミッドとウーハーを三つのユニットの軸が揃うように組み直しました。このところ腕を上げたのでそれに要した時間はほんの30分でしょうか、あっという間に調律しました。
4318が一気に化けました!。43シリーズ特有の重たく難儀そうな鳴り方はどこにもありません。程よい重量感を伴った低音がいとも軽やかに出てしまうんです。
たまりませんねぇ。
気持ちいいですねぇ。
JBLサウンドの血統を引き継ぎながら、どんな音楽でもこなすユーティリティー性を持っています。それでいてどんな音楽もJBLサウンドに聞こえてしまうという事が決してない点が、私の好むところであり、合格点を与えられる最大のポイントであります。1本175,000円は安過ぎです。
ほとんどはオリジナルを越えられないのが普通ですが、何十年も継承されてここまで進化した例は珍しいと思います。物作りと言うものはこうあって欲しいですね。JBLの中でもトータルバランスでいえば価格を度外視して私はMVPに薦します。
ただお断りしておきますが、あくまでスピーカーのエネルギーの方向性を揃え、加速度組み立てを施した状態の話である事をご承知置き頂きたく存じます。
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From: S.N
To: info@rosenkranz-jp.com
Sent: Monday, October 22, 2007 1:02 PM
Subject: 有難うございました。
貝崎様
土曜日にクリニック&セッティングをお願いしました、S.Nです。
私の都合で朝早くから来て頂きましたこと、私のシステムで最良の音を探そうと渾身のお仕事をして頂きましたこと、そして何よりも素晴らしい音場をお造り頂きましたこと、心より御礼申し上げます。
私のシステムはエントリークラス的なものですし、また部屋などの環境もオーディオ的には全く整っていないものですから、ずっと貝崎さんにお願いすることを憚っておりましたが、今回思い切ってお願いして本当に良かったです。
私は、自分の家でこれ以上の音質は求めないと言い切れるほど、貝崎さんに造って頂いた音場に満足しております。
何より、貝崎さんの「このシステムと環境で最高の音」をテーマに「私の好みの音を作りあげる」だけに集中下さった姿勢に心から感服しております。正直申し上げると、「このアンプではこれが限界」とか「このケーブルを高いものに買い換えないと」などのアドバイスが中心になってしまうのかなと勝手に危惧しておりましたが、システムやアクセサリー類に対する評価は一度もされず、ただただ「部屋にあるものをどうやれば活かせるか」という姿勢でセッティング下さるそのプロフェッショナルさにすっかり魅せられてしまいました。(逆に不要なアクセサリーはご指摘下さいましたが<笑)
順を追って改善頂き、その都度、私のフィーリングを確認して頂きましたが、最初のスピーカーの位置の変更で出た「新しい音」を聴いた段階で、私は「もうあとは貝崎さんにゆだねよう」と思ってしまいました。それぐらい、激変したのです。
それは音が音楽に変化した瞬間だったのだと思います。
以降のセッティングはまさに「神業」でした。加速度組み立ても驚愕でしたし、不揃いな部屋のコーナーを逆に利用したセッティングにも素晴らしく効果的でした。何よりも驚いたのは、部屋の後方にある、重量のある大理石を台につかったランプの位置決めをされたときでした。素人の目には、ほんの4、5ミリ場所を移動しただけに見えましたが、貝崎さんが「これで良し!」とおしゃって位置決めした後に出た音といったら!それは技術という言葉の定義を超えていました。
あるいは、本当のプロフェッショナルな方の仕事というのはこのような「神のものとしか思えない技」を感じさせるものなのかも知れませんね。
これで、私は晴れて自分のシステムに対する「迷路」から脱出して、好きな音楽にさらに集中できます。そして、これからさらに欲が出ても(笑、そのときは迷わず貝崎さんに相談させて頂きますので、今後とも宜しくお願い申し上げます。
末尾ではございますが、貝崎さんはそのプロフェッショナルな技術は勿論のこと、お話くださる言葉の数々が本当に魅力的な方で、なるほどこの人間性がこの音に対する感性を造っているのだなと思いましたことも付け加えさせてください。若輩者なこのような感想をお伝えして申し訳ありません。私も、自分の仕事もプロフェッショナルとなるべく、努力します!
S.N
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